第11章 キミ色フォルダ Root Green
「俺の彼女になってほしい」
そう伝えた瞬間、ニノの顔が泣きそうに歪んだ。
この時の俺は、極度の緊張と早く自分の気持ちをニノに伝えなきゃっていう焦りとで、頭の中がぐるぐるしちゃってて。
自分の失言に気付いてなかった。
だから、ニノがなんでそんな顔をしたのか分からなくて。
「………ごめん、無理」
「え?」
「今はこんなカッコしてるけど、俺は男だもん…彼女にはなれないよ…」
なんで断られるのかも分からない馬鹿な俺に、ニノは悲しそうに笑った。
「そんな風に言ってもらえて嬉しい…でも応えられない。俺は女の子じゃないから…ごめんね…」
そこまで言われて、俺はやっと自分が何を言ったのか気付いた。
「雅紀ならすぐに可愛い彼女が出来るよ」
「ちがっ…」
違う!俺は彼女が欲しいわけじゃない!
慌てて弁明しようとしたけど、突然観覧車の扉が開いて、驚いて口を閉じてしまう。
「お帰りなさい!お足元にお気をつけてお降りください!」
いつの間にか1周していたらしい。
笑顔の係員さんに早く降りるよう促される。
あまりのタイミングの悪さに舌打ちしたくなったけど、係員さんは仕事をしただけで何も悪くない。
もたつく俺を置いてニノは1人でさっさと降りてしまったから、俺も急いで降りて追い掛けて。
出口に向かってずんずん歩いて行くニノの腕を掴んで、無理やり足を止めさせた。
「ニノ、待って!さっきのは違くて…」
何とか話を聞いてもらおうとしたんだけど、振り向いたニノは笑ってて。
それがとても綺麗で、とても悲しい笑顔で。
泣いてくれた方がマシだと思うような笑顔に、言葉を失ってしまって。
「今日はありがとう……バイバイ、雅紀」
俺の手をそっと外して走り去っていくニノを、それ以上追い掛けることが出来なかった。