第11章 キミ色フォルダ Root Green
「とりあえず移動しよっか」
「うん」
いつまでも駅にいても仕方ないから遊園地に向かい始める。
隣で髪をふわふわと揺らしながら歩くニノが可愛くて、なんとなくソワソワしちゃうけど。
当のニノは、だいぶ落ち着きを取り戻したみたいに見える。
…そろそろ聞いても大丈夫かな?
「ねぇ、ニノ?どうしてそんな可愛い格好してるの?」
否定してるみたいに聞こえないように声色にまで気をつける。
もう泣かせたくないからね。
まぁ、それなら聞かなきゃいいのかもだけど…
でも、やっぱり気になるじゃん!
ニノが自分からこんな格好するわけないんだから。
「あ、そっか…」
今度は誤解させずに済んだみたいで、ニノは説明しなきゃねって言うと素直に話し始めてくれた。
「雅紀と約束した後にね、またクラスの女子に捕まって…」
「女子に?」
「うん…なんでか分かんないんだけど、みんな俺たちが遊園地に行くこと知ってて…」
最近のニノは、どこに居ても注目されてたから。
遊園地に行くことは普通に人がいる場所で話してたから、それがクラスの女子の耳にも届いたんだろう。
「でね、俺が優勝出来たのは自分たちのおかげでもあるはずだから、ご褒美をちょうだいって言われてね」
「ご褒美?」
確かにニノが優勝出来たのは、ニノの可愛さにいち早く気づいて美少女に変身させた彼女たちの手柄だとは思うけど。
堂々と褒美をくれって言える図太さがいっそ清々しい。
「じゃあチケット譲るよって言ったんだけど、それはダメって…」
「ダメ?」
「チケットはいらないんだって」
褒美をくれと言ったのに、賞品はいらない?
あ、ペアチケットだから、2人分しかないのは不公平ってことなのかな?