第11章 キミ色フォルダ Root Green
文化祭の片付けが終わったら、すぐに元通りの日常が戻ってきた。
「ニノー!学食行こ!」
「はーい!ちょっと待って!」
昼休み、今日はニノと学食に行く約束をしてたから声を掛けたんだけど、ニノはまだ準備が出来てなかったみたいで。
急いで教科書を片付けたり、財布を探したり、アタフタしてる。
その動きがぜんまい仕掛けの人形みたいでちょっと面白い。
「くふふ」
「お待たせ…?」
1人で笑っちゃってたら、準備が出来てパタパタと駆け寄ってきたニノが不思議そうな顔をした。
ニノがコテっと首を傾げると、あちこちから小さな歓声と可愛いって言う声が聞こえてくる。
あー、そうだった。
元通りの日常ではないんだった。
文化祭のミスコンで優勝したニノは、一躍有名人になって。
今や、男女問わず全校生徒の注目を集めていると言っても過言じゃないかもしれない。
まぁさ、分かるよ。
女装して美少女になれたのは、そもそも元の顔が整ってるからで。
つまり実はニノってかなりのイケメンなんだよ。それも可愛い系のイケメン。
ニノは部活や委員会はやってないし、大人しくて目立つタイプじゃなかったから、気付かれてなかっただけなんだよね。
それがミスコンに出たことによって、ニノの顔の良さが周知されて。
にわかファンが大量発生したわけだ。
文化祭以降、ニノは常に注目されてて、ちょっと何かするだけで…何なら歩いてるだけでもキャーキャー言われて。
すげー疲れそうだなって思う。
でもニノは至って普通。
それこそ今までと何にも変わらない。
疲れてる様子も見せないし、変に調子に乗ったりもしない。
騒がしい外野は徹底的に無視。
直接話し掛けられない限り見向きもしない。