第11章 キミ色フォルダ Root Green
モヤモヤしながら黙って見ていたら
「やだよ、お断り!俺にだって選ぶ権利があるっつーの!」
ニノは笑いながら一蹴して、伸ばされた手をパシッと払い除けた。
「えぇー、ニノー」
「寄るな!気持ち悪い!」
「あはは!ふられてやんの!」
「諦めろ諦めろ」
振られたやつが大げさに泣きついて、ニノがわざとらしく冷たくあしらって。
ミニコントみたいなやりとりにどっと笑いが起こる。
みんな笑ってるけど、俺はホッとしてた。
こんなのただのおふざけなのに、ニノがキッパリ断ってくれたのが嬉しかった。
ニノも一緒に笑ってたけど、何かを探すみたいに視線をさ迷わせてて。
どうしたんだろ…と思ってたら、パチッと目が合った。
俺と目が合った瞬間、パッとニノの顔が明るくなった…ような気がした。
「雅紀!」
人垣をかき分けて、ニノが満面の笑顔で俺のところに駆け寄ってきてくれる。
ニノが俺を探して、俺のところに来てくれた。
それだけのことなのに、それがめちゃくちゃ嬉しくて。
モヤモヤもイライラも全部吹っ飛んで行く。
我ながら単純だ。
「雅紀ももう準備終わったの?」
「うん…つっても、俺はそんなやることなかったんだけどね」
俺も一応出場者だけど、みんな同条件にするためにって言って衣装は制服で統一されたから着替える必要ないし。
髪の毛セットするくらいしかやることなかったんだよね。
ちなみに、ニノもうちの学校の女子の制服を着てる。
あのセーラー服はニノにとても似合っていて可愛かったから、また見られなくて残念だけど。
あの可愛いニノを大勢に見られなくて良かったとも思ってしまう。
いや、今の姿も十分過ぎるくらい可愛いけど。
本当に男とは思えないくらい女装に違和感がないよなぁ…
男のままでも可愛いニノだけど。
女の子の格好をしたらもっともっと可愛くて、やっぱり俺の好みど真ん中なんだよなぁ。