第11章 キミ色フォルダ Root Green
落ち込んだ気持ちは簡単には浮上せず、トボトボと帰った家の前。
そこに、何故かニノが居たんだ。
最初は誰だか分かんなかった。
だってその時のニノは女装してて、どっからどう見ても可憐な女の子にしか見えなかったから。
見慣れないセーラー服の後ろ姿に声を掛けて。
その子が振り向いた瞬間、息が止まったかと思った。
色白で華奢で、頼りなげに揺れる茶色の瞳が子犬みたいで。思わず守ってあげたくなるような儚げな空気を纏っていて。
ぶっちゃけ俺の好みど真ん中だったんだよ。
そんなどストライクな美少女がうちの前にいることにまず驚いて。
めちゃくちゃ可愛いその子が、よく見たらクラスメイトの男だってことに気付いて更に驚いて。
なんでここにいるのか。
なんで女装してるのか。
何にも分からないし、疑問しかなかったけど。
俺のことを待ってたはずなのに、声を掛けたら逃げるように帰ろうとするから。
反射的にその細い手首を掴んで引き止めて、なかば強引に家に招き入れてしまった。
でも何も考えずに引っ張りこんだ俺の部屋は、かなりとっちらかってて。
相手は男友達なんだから、多少部屋が汚くてもいつもなら全然気にしないのに。
今のニノは、ニノであってニノではないというか。
散らかった部屋が無性に恥ずかしく思えたり、床に直接座らせるのを躊躇ったり…
ニノだと分かってるのに、女の子を相手にしてるみたいな気分になっちゃって。
ちょっと一旦落ち着こうと、飲み物を取りに行くフリしてニノから離れた。