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innocence

第2章 きみがため


電脳救命センター・通称CRと通常病棟の間には、エレベーターと連絡用通路がある。不便なことに、地下には自販機が設置されていない。そのため、コーヒー一つ買うにもエレベーターに乗らなければならない。闇医者・花家大我も被害者の一人である。
彼は色々あって医師免許を剥奪された身だが、過去の仮面ライダーとしての功績とゲーム病の知識を称えられ、特別に病院への出入りが許されたのだった。

若干急ぎ足でスロープを渡ると、診察室の前で女性が一人倒れていた。
「……おい、あんた大丈夫か?」
背中を軽く叩くが反応がない。仕方なく女性の肩を引き、顔をこちらに向けさせた。
すると、耳障りな電子音と共に女性の姿がぼやけ始めた。
「ゲーム病……!」
即座に症状を理解した大我は、すぐさまCRに緊急連絡を入れた。
「ストレッチャーは……クソッ!直接運んだ方が早え!!」
普段なら、ゲーム病患者は救急隊員の手を通してCRに運び込まれる。だが、今回は事情が違った。

大我は迷わず女性の膝下と背中に手を差し入れ、力強く抱き上げた。いわゆる「横抱き」の体勢である。
その拍子に、女性の頭が大我の胸板にすっぽり収まる。頬には薄く涙の跡が付いていた。
「……待っとけよ、すぐ着くから」
肩を支え直すと、大我は猛然と今来た道を引き返した。
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