第2章 一戦を越えて
「ですから、お仕事なんです…」
「なんで女子トイレなんかに落書きしたんだ!?」
ひよりの目の前には掃除用ブラシでぼこぼこに叩かれ、たんこぶだらけで鼻血を垂れ流している自称神様と、夜ト程では無いが、頭を叩かれてうずくまっている少年、雪音がいた。
「私どもは幅広い年齢の方々から愛されたく云々…」
「じゃあ前にもここに来たのね!?夜トって本っ当にサイテーー!」
ひよりはたんこぶだらけの神様の言うことを遮り、大きな声で口を開いた。
すると夜トは少し前屈みになり、片手で顔を覆うと、苦しそうな表情を見せた。
「頼むからひよりまでがなるなよ…体に響く…はぁ…」
夜トは毎度、魔が刺す度に雪音に刺されているからか、ひどく消耗していた。
「あ…そうだった、夜ト、体の具合…」
少しやり過ぎたという、後悔がひよりの頭をよぎった。
夜トはふらり立ち上がると「…依頼で来たんだよ…」と、力なく答えて、一番端の個室まで歩いた。
「本日のお客様はこちらっ」
そして力任せに扉をけ破った。