第1章 憧れの人
また!
渾身の力を込めて、最後の力を振り絞る。
そのままいけ!
ーーーカランっ
が、メロディの太刀はセシルの力強い返しで跳ね飛ばされた。
メロディは武器を飛ばされててしまった。
「勝負あり!!」
審査員の声が響くと会場は無念と歓喜の両方の声で沸いた。
…負けた。
あと少しだったのに。
最後の最後は単なる力の差…。
「ありがとう、良い勝負だったよ。。また勝負しよう。」
顔をあげるとセシルが兜を外し手を差し伸べていた。
『ふ…。本当にセシル君だったんだ。』
「…君は…?」
メロディは兜を外してみせ、彼の手を取った。
『覚えてないかな?同じクラスだったメロディだよ。』
「!!」
会場もどよめいていた。
「メロディ?!ってあのF組の女子か!?嘘だろ!?」
「そういえば、メロディいないわ。」
会場がざわつく中セシルの表情は驚きから微笑みに変わった。
「もちろん覚えてるよ。メロディちゃん。君はクラスで1番可愛かったからね。」
言い終わると同時にメロディを引っ張り起こした。
『!?
なっ、なっ、なっなんてこと…!』
あまりにもストレートな発言に言われたこちらが反応に困る。
「ん?僕変な事言った?」
本人は冗談でもなく素のようだ。
ーーー
大会が終わりメロディは惜しくも二位だったが、話題性には充分事欠かなかった。
実は元々容姿で評判だったメロディだが、武闘大会二位の女子として一躍有名になっていた。
しかし、当の本人はというと…
『はっ!やあああ!』
セシルに負けた事からの敗北感からより一層の鍛練を積んでいた。
「精が出てるね。メロディ。」
『セシル…。だ、れ、の、せ、い、だと思ってんの!』
あれから同級生のよしみもあって、ちょくちょくトレーニング場で交流するようになった。
「ははは。僕のせいだって言いたいの?」
『あたり前でしょー!次こそは絶対に勝ってみせる!』
「メロディは充分に強いよ。あの時だって力の差が無ければ僕が負けてたかもしれないんだ。」
『力の差なんて言い訳したくないの。』
「メロディは頑張り屋さんだなぁ。」
『ねぇ、セシル、稽古の相手してよ。』
「ふふ…いいよ。」