第6章 いちょう
「銀杏はそのままでは食べられません。周りの果肉を削ぎ落として、殻ごと加熱してから中の種を食べるんです。政宗さん、あんまり興味がなさそうだったので言わなかったんですが…」
「あっそ。………あ」
「??…どうかしましたか?」
「……別に。そっちも早く帰れば?」
家康公は踵(きびす)を返して、そのまま行ってしまった。まだ話したかった………。
「仕方ない。……そうだ、来たついでだから」
信玄さまへお土産に少し持って帰ろう、と思った矢先、あっちの方からザワザワと葉擦れの音がして、ボタボタとこっちへ近付いてくる。
………ボタボタ?
答えに辿り着くより早く、ザワザワが俺の上を通り過ぎた瞬間
ベチッ……ベチベチベチベチベチッ!
「痛いッ」
熟れた銀杏が風に煽られて、一斉に落ちてきた。
地味に痛い。
これはダメだと判断、お土産を断念して早々にその場を離れた。