第5章 "過去"というライバル
サボは準備の中で電伝虫を二つ用意し、二人専用の番号を用意した。
暫くしてリラの部屋の扉をノックする。
…トントン…
「はーい、誰?」
「俺だよ、サボだ。」
ガチャリと開けられたドアから、リラがひょこりと顔を出した。
「なにしてた?」
リラの頭を撫でながら、サボは彼女の部屋に入っていく。
「今ね、革命軍のメンバーの人達の名前を覚えていたの。」
「あ、幹部には一部…濃い人たちがいるけど、みんな良い奴ばかりだな。軍隊長は各地に散らばってるから、なかなか会うことは出来ないよ。一人は明日会えるだろうけど。」
「そうなのね。挨拶しなきゃ。ところで、準備は終わったの?」
「あと少し。そうだ、電伝虫を持ってきたんだ。リラと、俺専用のね。」
サボは、リラの手に電伝虫を乗せ、番号の紙を渡した。
「使い方は、わかるね?受話器がこれ。この貝のところに番号があるから。」
「意外と大きいのね、電伝虫。」
「これなら、どこにいても念波が届くから。リラの声をいつでも、どこにいても聞ける。」
「遠く離れていても?」
「あぁ。子電伝虫は狭い範囲でしか使えないけど、これは、国外と通信できるんだ。」
「……へぇ…知らなかった…。ねぇ、明日は、早いの?」
「あぁ、早い。なぁ、リラ。頼みがある。」
「なぁに?」
サボは彼女を抱きしめ、言った。
「何もしないから、今夜一緒に寝てくれないか?」
「……サボ…」
頬を紅く染めて恥ずかしそうにサボの名を呟く。
サボは抱きしめている力を強めた。
「隣にいて、寝てくれるだけでいい。」
「私も、サボに隣にいて欲しい…そしたら、安心して眠れる気がするから。」
そうサボの背中に腕を回して、服をギュッと掴んで答えた。
「リラ。ちゃんと言う。俺はリラが好きだ!俺と付き合ってくれないか?」
抱きしめていた腕を緩め、彼女の顔を見つめた。
「サボ…私も気がついたらあなたを好きになってた。サボの紡ぐ言葉に、サボの行動にドキドキしてることに気がついたの。私をサボの恋人にして…。」
上目遣いで頬を紅く染めながら言う彼女のその言葉には、サボの理性を失わせるのに充分な破壊力があった。