第5章 "過去"というライバル
サボは、あの後なんとか理性を保って夜を迎えていた。
お風呂から出て髪を乾かそうとしていた時、扉をノックする音がリラの部屋に響いた。
…コンコン。
どうぞ、と答えると扉が開いて、入ってきたのはコアラだった。
「リラちゃん、もう寝るところだった?」
「うん、髪を乾かしたら寝ようかと思って。」
タオルで髪を乾かしながら答えると、コアラが隣に座って尋ねてきた。
「サボくんとは、どうなった?」
リラは、コアラに答えていいのか分からなかった。
「……うん……」
「答えにくい質問しちゃったね…ごめんね。明日からサボくん、二週間ここを……」
そう言っている途中で、コアラの視界に電伝虫が入った。
「あれ…電伝虫?リラちゃん、持ってたんだ?」
コアラは、そう言えばサボくん、電伝虫探してたよね…と思いながら問いかけた。
「いや、それは…」
答えあぐねていたところで再び、部屋にノック音が響いた。
……コンコン
「はい、どうぞ?」
ガチャ、と扉が開いて入ってきたのは、サボだった。
「サボくん?!」
「コアラ!なんでいるんだ?!」
二人は顔を見合わせて、互いになぜここにいるのか、という顔をしていた。
コアラはサボの格好に目をやる。
サボは寝る格好をしていたのだ。スウェットの上下を着てリラの部屋に来たのだ。
「…サボくん、何しに来たの?」
「何って、リラと一緒に寝ようかと思って……」
そうやって涼しい顔で言うサボの近くで、リラは恥ずかしさで真っ赤になって、髪を乾かしていたタオルで顔を隠している。
「……え?寝る?リラちゃんと??」
この時、コアラの頭には完全に疑問符が浮かんでいた。
その証拠に、驚いて目をぱちくりさせている。
「あぁ。一緒に寝るために来た。」
さらりとそう言って、サボは顔を隠す彼女の隣に座り、肩に手を回した。
「……ちょっと待って。どういうこと?」
コアラは頭を抱えた。
「リラは俺の女になったんだ。明日行く前にちゃんとドラゴンさんに伝えるつもりだ。」
リラの肩に回した手に力を込めて、抱き込むようにしながら、コアラに答えたサボ。
「……リラちゃん……」
コアラは、動揺を隠すようにため息をつきながら二人を見た。