第30章 映る
「「「乾杯、乾杯、乾杯~!」」」
ベンの掛け声だけで全員のボルテージは一気に上昇し、グラスの中身がただの水だとは思えない大乾杯だ。
「調査兵団のみんな、サラダの横の皿に乗ってるのが、俺が調達した稀代の天才シェフのアレッポラ特製骨付きラム肉の香草マリネ焼き。そしてその横の小鉢のが、稀代の天才シェフのアレッポラ特製ラム肉のトマト煮込みだ。急なことで味見程度の量しかないが、美味いのは間違いないから食べてくれ」
味見程度と謙遜しているが、着席している者全員に結構な量が用意されている。
「ベン、ありがとう。こんなにたくさん」
「マヤのためなら朝飯前さ!」
ベンはパチッと片目をつぶって、相変わらずの調子の良さ。
「美味しそう! 早く食べよう!」
「そうだな!」
ラム肉のことをベンから聞いたときから楽しみにしていたペトラとオルオが、骨付きラム肉にかぶりついた。
「やわらかい!」
「なんだこれ、美味ぇ!」
二人の食らいつきを見て、エルドとグンタも口をつけた。
「ほんとだ、美味いな」
「俺、ラム肉って臭いって思ってたけどそんなことないな」
リヴァイ班全員の好反応を見て、他の皆も食べてみる。
「ほんとだ、やわらかくてジューシーだわ」
「美味いです、タゾロさん!」
マヤはもぐもぐと美味しそうに食べているし、ギータはなぜかタゾロにそのそばかすだらけの笑顔を向けている。
「そうか、美味いか!」
タゾロも後輩の大好評ぶりに、嬉しそうだ。
「うん、俺の好きな味つけだ」
故郷の村がユトピアに近いタゾロには、ラム肉はおなじみの料理だ。
白樺の家具につづいてラム肉までもが好評で、タゾロにとって嬉しい親睦会のスタートとなった。