第30章 映る
「よし、これで駐屯兵側の自己紹介は終わりだね。じゃあ次は君たちだ」
ベンはにこやかに、テーブルの向かいに座るエルドに笑いかけた。
明らかにエルドが年上だとわかるだろうに、ベンはそんなことはお構いなしだ。
エルドはエルドで初対面の先輩兵士に対しての礼儀がなっていないなど、まったく気にしていない。ただこの親睦会には、少々違和感を感じ始めている。
……兵長の指示で参加した親睦会だから、もっとちゃんとしたものだと思っていたが。これだとただの飲み会か?
疑問を抱きつつも、律儀に立ち上がって簡潔に挨拶する。
「調査兵団特別作戦班のエルドだ。よろしく」
あえてリヴァイ班と言わない。すかさずベンが訊いてくる。
「その特別作戦班というのがリヴァイ班かい?」
「そうだ」
ベンはひゅうと口笛を鳴らし、他の駐屯兵は羨望のまなざしを向けた。
その雰囲気にグンタは少々調子に乗る。
「俺もリヴァイ班だ。なんでも訊いてくれよ!」
オルオとペトラもつづいた。
「リヴァイ班のオルオだ。マヤの同期」
「同じくマヤと同期でリヴァイ班のペトラです」
席順からいくと次はマヤだ。
端からエルド、グンタ、オルオ、ペトラ、マヤ、タゾロ、ギータと座っている。
……私、リヴァイ班じゃないんだけれど…。
マヤはなんとなく気まずいなぁと思いながら立ち上がった。
「マヤです。私はリヴァイ班じゃないの…、ごめんなさい」
全員がリヴァイ班だと勝手に勘違いしていた駐屯兵たちが騒ぎ出す。
「えっ、違うの…?」
「なんだ~」
「可愛いからなんでもいい。むしろリヴァイ班じゃない方がよくね?」
「いやオレはリヴァイ班の方が強い女って感じで好き」
今度のささやきは、しっかりペトラとマヤの耳にも入った。
二人は恥ずかしくなって、思わず顔を見合わせた。