第30章 映る
わ~! いいぞベン!と歓声が上がるなか、オルオが隣に座るペトラにささやく。
「……第一回って二回目もあるんか?」
「知らないわよ…!」
「ってか男女の比率おかしくねぇか…?」
オルオが首をかしげるのも無理はない。
ベンが集めた十人は、男が八人に女が二人だった。
「いいんじゃない、別に」
ユトピア区の駐屯兵と運命の出逢いを果たして、互いの故郷を行き来したり、実家を泊まり合いっこしたりをやってみたいペトラは、男子の人数が多い方がそれだけ出逢いの可能性があるので、なんの異論もない。
「でもよ、こっちは男五人なんだし、ベンが集めるときに女を多めにしないか?」
「何よ、彼女でも作る気なの?」
「そ、そうじゃねぇよ…!」
止まらないオルオとペトラのささやきを見かねて、隣のマヤが注意をかねてひとこと。
「……自己紹介が始まるわよ」
ベンの流暢な司会は進行していて、ちょうど駐屯兵から自己紹介をするところだ。
「じゃあ始めよう!」
テーブルの端っこで立って司会をしていたベンが先陣を切る。
「俺はベンジー、ベンってみんな呼んでる。そこにいる…」
マヤを指さしてから。
「マヤと訓練兵のときの同期なんだ。俺とマヤの懐かしい再会からこの親睦会がひらかれることになったって訳。よろしく!」
ベンがマヤを指さした途端に皆が一斉にマヤに注目したので、マヤは恥ずかしくなってうつむいてしまった。
「……超可愛くね?」
「オレは隣の方が好み」
「どっちでもいい、どっちもイケてる」
駐屯兵があれやこれやと、ささやいている。
「俺はマイケル。生まれも育ちも、このユトピア。しがない駐屯兵だけど絶賛彼女募集中!」
マイケルとやらはどうやらペトラが気に入ったらしく、ペトラだけをガン見して自己紹介を終えた。
「オレは…」「俺は…」
次々と駐屯兵男子の自己紹介が進み、テーブルの端に座る女子の番になった。
「サリーナです。ベンからリヴァイ班がいると聞いて参加しました。巨人の話が聞きたいわ」
「ジュディよ。あたしもサリーナと一緒で有名なリヴァイ兵長とその直属の調査兵のすごい話に興味津々!」
二人ともいかにもミーハーな様子で、調査兵男子を舐めまわすように見ている。