第30章 映る
まさかリヴァイがただの独占欲で、他の男の目にふれさせたくないから目立つなと言ったとは露とも知らず。
“いや、そうじゃねぇ。俺はお前が他のヤツらに…” と言おうとしたところへ、タゾロがやってきた。
「マヤ、白樺の椅子だが…」
親睦会開始までの30分足らずのあいだに、タゾロの知人の店に白樺工芸品の椅子を見にいこうとしていたのだ。
「あっ、はい。お店は近いんですか?」
「ここから数分だから問題はないんだが…」
空気の読めるタゾロは、リヴァイの顔をうかがう。
今この場から、リヴァイに断りもなくマヤを連れ出すことは得策ではない。
「……兵長、この近くで知り合いが家具屋をやっていてマヤを連れていきたいのですが」
じろりとリヴァイに睨まれて、さらに情報を加えた。
「オルオとペトラも一緒に…」
マヤも言い添える。
「タゾロさんの故郷の木の白樺で作った椅子を見にいくの。白くて綺麗なんですって」
「……そうか」
マヤが目を輝かせている以上、引き留める理由などない。
リヴァイは少々不安げに許可を待っているタゾロに軽くうなずいてから、マヤに優しく声をかけた。
「楽しんでくるがいい」
「はい!」
はずんだ声に愛おしそうに目を細めると、そのままくるりと背を向け駐屯兵団本部に入っていく。
……今からシムズとサシで飲むとなると億劫だが、マヤが喜ぶならユトピアに寄ったのも悪くねぇ。
リヴァイのそんな想いは見る人が見れば、背中ににじみ出ていたようで。
タゾロは静かに微笑んだ。
……兵長はマヤを本当に大事に想っているんだな…。
「さぁさぁ、お集まりのみんな!」
駐屯兵団本部内の食堂で、ベンによる調査兵団との親睦会が始まった。
食堂の一角でベンが集めた駐屯兵十人と、リヴァイ以外の全周遠征訓練中の調査兵七人が、長い木製のテーブルをはさんで向かい合って座っている。
「第一回ユトピア区駐屯兵と調査兵の親睦会を始めるよ! 隊長とリヴァイ兵長には盛大に親睦を深めろと寛大な許可をもらってるので、大いに盛り上がろう!」