第30章 映る
なぜかリヴァイを説得できると謎の自信を持っている、やたら調子のいいベン。
マヤが、なぜベンはこんな調子なのか、そういえば訓練兵時代もこんな風だったわと思い返していると。
「ベン、ここにいたのか。隊長が捜してたぞ」
通りの向こうから近づいてきた駐屯兵が声をかけてきた。
「マジですか」
「あぁ、急いで行ってくれ」
どうやら何年か先輩らしいその駐屯兵の言葉に、ベンは急に顔を引き締めた。
「行こう」
ちょうどマヤたちも駐屯兵団本部に向かっているところだったのだ。四人はその後無駄口は一切たたかずに直行した。
本部に到着すると、どうやらリヴァイもベンを捜している隊長とやらも同じ部屋にいることがわかった。
「隊長もリヴァイ兵長も一緒にいるなら、まとめて用事済ませられてラッキー!」
ベンはひゅうっと口笛を吹くと、足取り軽く階段を上っていく。
マヤたち三人は少し緊張した面持ちでベンについていったが、会議室の扉の前で急に立ち止まったベンにぶつかりそうになった。
「おっと、行き過ぎるところだった。とりあえず隊長に呼ばれてる俺だけ入るから」
ベンはせわしなく扉をノックして返事を待たずに “失礼します!” と入室した。
廊下に残されたペトラたちは顔を見合わせている。
「ねぇ、私らも行った方がいいんじゃない?」
「でもあいつの言うように、俺らはここに呼ばれてる訳じゃねぇしな」
「それはそうだけどさ…。マヤ、どう思う?」
「そうね…。馬を預けたら駐屯兵団本部の前で兵長を待つ予定だったから、そうしようか? ベンに会ったから、なんかつられてここまで来ちゃったけど」
「そうか、元々の行動をすればいいんだ。じゃあ出よう」
せっかく二階まで来たが、またぞろぞろと階下へ。先ほど一階で顔を合わせた駐屯兵が、うろうろしている調査兵を怪訝そうに見ていた。
「さっきの人、なんでこんなとこで迷ってるんだ?みたいな顔してたよね」
本部を出てすぐに、ペトラが顔をしかめた。
「仕方ないわよ。実際二階に上がったと思ったら下りてきて、迷子みたいだったもの」
マヤは自分たちの行動を思い浮かべて、静かに首を振った。