第30章 映る
「まぁ別にいいけどね。親睦会に来る人に変に思われなければ…。ところでさ、エルドさんたちもここに集合だっけ?」
「……どうだろう? エルドさんとグンタさんは同期に挨拶しに行ったんだよね?」
「そう聞いてる」
「タゾロさんは同郷の人がユトピアでお店をやってるから会いに行くって言ってた」
「そうなんだ。で、ギータは腰ぎんちゃくでついていったと」
「腰ぎんちゃくって…」
ペトラの容赦ない言いぐさに、マヤは困った顔をする。
「だってそうじゃん。ギータって同期の二人といるよりタゾロさんにひっついてるイメージ」
「そうね…。早朝のランニングを一緒にするようになってから、本当に慕っているから。タゾロさんは頼りになるし私も大好きだから、ギータの気持ちはわかるけどね」
マヤは自身もギータに負けず劣らず慕っているタゾロの顔を思い浮かべて微笑んだ。
「タゾロさんやエルドさんたちがどうなってるのかわからないけど、とりあえず待とう」
「そうだね」
ペトラはマヤの提案にうなずいてから、話題を変えた。
「親睦会、どうなるのかな? ベンは兵長にうまく言うって自信満々だったけど、結局兵長も参加するただの食事会になりそう…」
「そうね。でも兵長だけのけ者にするのは可哀想だから、私は一緒がいいけど」
「そりゃマヤは、いつでもどこでも兵長と一緒にいたいだろうけどさ~。いちゃこらされるこっちの身にもなってよ」
「そんなことしてないわ…!」
マヤは真っ赤になって反論している。
確かに二人きりのときは、そういうこともあるといえばあるが、決して兵団の皆がいる前で何かをした覚えはない。
「してるわよ、ねぇオルオ?」
急に話を振られて、それも一番関わりあいたくないリヴァイとマヤのスキンシップ問題で声が裏返ってしまう。
「へ? いや、まぁなんだ? 俺に訊くなよ、そんなの知らねぇ…」
「何よ、はっきりしないわね。実際に兵長とマヤが何かしたって言ってんのじゃないわよ。ただ二人で立っているだけでもさ、なんて言うの、こう二人のあいだにある空気が違うっていうか…」
「それっていちゃこらしてるのとは違うんじゃねぇの?」
「そうかもしれないけどさ、だってうらやましいんだもん…!」