ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
体が勝手に動いて気が付いたらキスをしていた。
あっ、と思った時には目の前のユウコはキョトンとしていた。
熱い…顔が熱い…今きっと僕は真っ赤だ。
どうして額へのキスでこんな…。
「…っ」
多分これは昨日見た不思議な夢のせい。
僕の背がすごく伸びていて、声も低くて…もう大人だった。隣にいたユウコも大人で背も伸びていたけど、僕と比べたら全然小さくて可愛くて…綺麗な黒髪からは甘い香りがした。
指を絡めて、キスをして…涙が出そうなくらい幸せで、僕は何度も何度も聞き慣れない低い声で「愛してる」と言っていた。幸せなのに何かが不安で、腕の中に閉じ込めるようにきつく抱き締めていた。
シャワー室の脱衣所でパジャマから服を着替え、鏡を見つめる。
確かに夢なのにすごくリアルだった。
大きくなったら包み込むようにユウコを抱き締められるようになるの?
「…あー…あー…」
この声も夢の中みたいに低くなって…いつかあんなふうにユウコの名前を呼んだり、愛してると囁いたりするのかな…?
「……俺」
自分のことを“俺”と呼ぶ夢の中の自分に違和感もあったけど、それを少しかっこいいななんて思ったりもした。
夢の中の僕、少し兄さんに似てた。
兄さん…。
すると部屋の方からベルの音がした。
ジョセフがきたんだ。
脱衣所を出て部屋に戻ると、ジョセフがドアを開けて待っていた。
「おはよう、準備は出来ているか?」
「おはよう、ジョセフ。うん、ちょうど着替え終わったところ」
「そうか、ユウコトイレは大丈夫か?」
『うん…今行ってきた』
「アッシュ、ユウコのリードを」
「……うん」
ベッドのユウコに近づいて、リードをベッド脇に引っ掛ける。これによってユウコはまたここに縛られてしまう。
「ユウコ、いってくるね…」
『…ん、』
いつもは目を見て、いってらっしゃいと言ってくれるのに今日は目を伏せたまま視線が上がらない。
「パパを待たせている。いくぞ」
ジョセフの声に背を向けて歩き出すと、左手をグッと引かれた。
『…ま、まって!』
「ユウコ?」
『いってらっしゃい…』
「…うん、ありがとう」
僕はユウコ抱き締めて部屋を出た。