ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
苦しくて寂しくて…悲しい気持ちで眠りに着いたのに、その日見た夢はとってもあたたかくて幸せなものだった。
夢の中、大人になった私とアスランはまだ隣にいて、手を繋いで抱き合って、恋人のようにキスをしていた。
優しくて大きなアスランの手が私の髪を撫でて、私たちには笑顔が溢れる。
『……ん』
目が覚めて段々と意識がハッキリとしてくる。
『……っ!?』
思わずビクッと反応してしまう。
温もりを感じると思ったら、昨夜背を向けて離れて寝ていたはずのアスランの腕の中に、私はいた。
コソッと顔を見上げてみると、まだアスランは綺麗な長いまつ毛を伏せてすぅすぅと寝息を立てている。
『………アスラン』
胸がギュッとなって名前を呼ばずにはいられなかった。どのタイミングでこの体勢に落ち着いたのかは分からないけど、抱き締めるように回ったアスランの腕が嬉しくて仕方なかった。
…もう、この気持ちは捨てるって決めたのに自分ではどうにもできない。
やっぱり私はアスランが大好きだ。
好きになってもらえなくても、
ペットだって良い…
生涯、今日の夢のような関係になれなくたって…
そばにいられたら、それで…
それだけできっと幸せだ。
『……すき、アスラン…』
閉じられたままのキラキラと光るまつ毛を見つめていたら、無意識に私の口が言葉を紡いだ。
アスランのシャツをキュッと掴んで胸に擦り寄ると、背中に回る腕に力が入った。
「んッ……ユウコ」
『お…はよう』
「…おは…ん?あー…あれっ?…」
アスランも戸惑っていたけど、離れない私を見ておはようと優しく微笑んでくれた。
その時、部屋に電話のベルが鳴り響いた。
私が布団の中でモゾッと動くと、僕が出るよといってアスランはパタパタと電話の元へかけて行った。
「Hello?…あ、おはよう…うん、僕だけ?わかった」
『…だぁれ?』
「…ディノから。部屋に来なさいって」
『すぐ?』
「支度ができる頃にジョセフが迎えに来るみたい」
『…そっかあ』
「ユウコ、」
『…ん?』
ちゅっ
再びベッドに近付いてきたアスランからおでこにキスをされた。
『……』
「……あっ…」
アスランはパッと手のひらで口元を覆うと背を向けて足早に服を着替えに向かった。