ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
「…え?」
『………っ』
「…今、ユウコ…」
自分のことを“ただのペット”って…?
『っ…ううん…お、やすみ』
頑なに僕に背を向けたままのユウコ。僕の心臓は全身に嫌な音を響かせていた。
聞き間違い、じゃないよね…?
さっきのモールスの答えも、今の言葉の意味も…聞きたいことはたくさんあるのに背を向けるユウコの体をこっちに向ける勇気がない。
僕はあの日、ユウコがクリスの部屋から帰ってきた時から何か違和感を感じていた。その後僕の体に起きたことに気を持っていかれて深く考えたのは少し落ち着いてからだけど…
会う度にユウコのことを気にするクリス、クリスの話をすると気まずそうにするユウコ…ふたりに一体何があったんだろう。
それとひとつ、明らかにおかしいことがあった。
それは僕と廊下に出たユウコが、忘れ物をしたと言ってクリスの部屋に戻ったこと。
ユウコは僕たちの部屋から出る時、何も持っていかなかったはず。クリスの部屋にいるときも何かをポケットから出したり手に持っていた様子はなかった。
部屋に帰ってきたユウコはやっぱり何も持っていなかった…と思う。
もし忘れ物が嘘だとしたら、どうしてそんな嘘をついてまでユウコはクリスの部屋に戻っていったのかな…そこまでしてふたりになりたかった、のかな?
それと、考えなくちゃいけないのは…僕の体のこともだ。
あれからユウコの発作は起きてないからキスをしていないし、ユウコの様子も少しおかしかったからハグもあまりしていない。
だけど、ユウコに発作が起きて…もしまた僕の体があの時みたいになってしまったら…。
「……っ」
ざわざわする心を鎮めるために目をつむった。
すると、
『……ぅ…、っく』
静かな部屋にユウコの小さな嗚咽が響く。
どうしてユウコは泣いてるの?
今何を考えているの?
…誰を想って泣いてるの?
涙を拭ってあげたくて、その背中に手を伸ばしてみたけど引き返してしまった。
…泣かないで、ユウコ