ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
『…っう、ぐ』
ユウコ、どうしたんだろう?
突然泣きはじめるなんて…
モールスで何を言おうとしてたのかな、
I…L…O…だめだ、わからない
「ユウコ…泣かないで…ごめんね?」
『…っ…ちが…、アス…わる、くない』
「…え?」
『な、んでもない…の、ごめ…んね』
「………」
これがなんでもなくないことくらい分かるのに、僕はなんて声を掛けたら良いのか分からなかった。
ユウコは涙を拭う僕の手を、遠慮がちに掴んでスっと下ろした。そして僕から逃げるようにタオルが置いてあるところへ歩き出す。
「…ユウコ」
『っん、ねむくなっちゃった…パパも今日はこっちにいないから、ご挨拶ないよね…?』
「……あ、うん…そうだけど」
『もう…寝ようかな、おやすみアスラン』
「ま、まって…ユウコが寝るなら僕も寝るよ…!」
ユウコは僕の横を無言で通って、ベッドに上がった。意図的に僕を避けているということが伝わる。
電気を消したままの部屋で、ベッドサイドランプの柔らかな灯りだけが僕らを照らしていた。
後を追うようにのそっとベッドに入ったけど、僕たちの間には今まででは考えられないくらいの距離があった。
隣を見ると、ユウコは僕に背を向けている。
「…ねえ、ユウコ?」
『………っ、うん?』
その声は鼻声で、怒っているという感情は全く感じられない。それよりも、なんだか悲しい声だ…まだ泣いているの?
「…こっちを向いてよ」
『………っ』
「まだ、涙止まらない?」
『…ッ…ううん』
「…ギュッてしてもいい?」
『だ…だめ…っ!』
「ユウコ…?」
『お、お友達って…寝るときにギュッて、するの?』
どういう意味だろう?
「え、友達?」
『…私たち…お友達でしょ?』
「友達じゃないよ」
『………え?』
あれ…?
自然と口から出た僕の言葉に自分でも戸惑う。
ユウコは友達じゃない
僕はいつからそう思うようになっていたんだろう。
『じゃあ…私たちってなに?』
「えっと…ユウコは友達じゃなくて…」
誰よりも
大切で、特別で、愛おしくて…
『私は…ただのペット…?』
ユウコは今、なんて言った?