ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
『…!?…う゛っ』
「まてよ」
『ッ!』
「…お前、教わらなかった?手を握って挨拶をした男はひとときの間は主人になるって。あんなに遊んでもらっておいて失礼なんじゃない?」
『…くる、し…』
「俺がいかに人間のメスに恨みがあるか、近々ちゃんと詳しく話してやった方が良さそうだね…」
『……』
「お前、まだ生きてたいでしょ?」
命の危険を感じ、コクコクと頷くと…ふっと笑ったクリスは、私のシャツのボタンを2つほど外して肌を露出させた。
何をするんだろう…
早く帰りたい、ここを出たい…
アスラン、助けて、こわいよ…!
クリスは私の鎖骨の下あたりに顔を近付けてぢゅるっと吸い上げた。
『…いっ…』
「…っふは、綺麗についた」
ついた…?パッと吸われた部分を撫でるが特に変わったことはない。なに…なに…?肌を見ようとしても自分ではギリギリ見えない位置だった。
「ソレが消える前にまた遊んであげるね…あ、そうだ」
ガタガタと震える体をスルッと撫でられる。
「今日この部屋であったこと、誰にも言うなよ?」
『……っ』
「…もちろん、“俺の”アッシュにも」
『……』
「わかった?それともわからなかった?…どっち?」
『……わ…か、った』
「ふふ、good girl…お前はそうやって余計なことは考えずにいい子なただのペットでいればいいんだよ…」
ドアが開き、背中をトンと押されたかと思うと私の体はもう静かな廊下にあった。
ドアを振り返ると、ニコッと笑いながらバーイ!と手をヒラヒラさせるクリスと目が合った。やはりそのブルーの目は冷たかった。
帰らなくちゃ…アスランが待つ部屋に…
そう思うのに足が動かない。
とても近いはずの部屋なのにその距離はとてつもなく長く感じた。
ドアの前に立ち、ベルを鳴らす。
中からパタパタとアスランの足音がする。
ガチャ
「あ、ユウコ!おかえ…っ…どうしたの!?」
私はアスランに勢いよく抱きついた。何があったのかは言えない、決して悟られちゃいけない。でも…アスランの体温に、匂いに、声に、抱き返される腕に涙がじんわりと込み上げる。
「おーい…ユウコ?」
『…ッ…』
「うん?」
大丈夫、大丈夫…
私はそう心に強く浮かべて顔を上げた。
『なんでもない…楽しかった!』