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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第14章 消えない傷


私はクリスの部屋のベルに手を伸ばしかけて、その手を下ろす。なんだか2人になってはいけないような気がして、引き返そうか悩んでいた。


ガチャ

『っ!!』

…どうしよう、アスラン

「何してんの?…早く入って」

グイッとリードを引かれ、私は強引に部屋の中に引きずり込まれた。

『…ッ…ゲホッ』

「アッシュに電話して」

『…え?』

「俺と話が盛り上がってるからまだ帰れない、って……早く」

クリスはカチャカチャと電話に私たちの部屋番号を打ち、受話器を押し付けた。

戸惑いながら耳にあてると、コール音がして間もなくするとアスランの声で「Hello?」と聞こえた。

『…ッ……、』

【……あれ?】

私が口をつぐんでいると、リードを引かれた。

『…ッう!』

【何?もしもし、だれ?】

『ア、アスラン…?』

【え、ユウコ?どうしたの?】

目の前のクリスは受話器を指さし早く言えとジェスチャーした。

【…ユウコ?】

『アスラン……』

…たすけて、と口に出そうになる。

【なにかあったの?】

『…ん、ううん…クリスとね、お話が盛り上がって…まだ帰れない…』

【そうなの?】

『…うん』

すると、クリスが受話器をひったくり話し始めた。

「あ、もしもし?今聞いたと思うけど話が盛り上がっちゃってさ、しばらく俺にユウコを貸してよ!……はは、わかってるよごめんごめん…うん、じゃあね」


ガチャ


『……あ、の』

「ユウコは物じゃない、ってさ。…ペットと物ってどっちが上なんだろ?」

クリスは遠慮なしにリードを強く引いてソファまで歩くと、勢いよく座った。突然リードを下に引っ張られる。

『っ!うぇっ…ゲホゲホッ!』

「…見下ろすなよ」

床に倒れ込むと髪を掴み顔を上げさせられる。

「…あはは!いいね…本来ペットは地面に這いつくばってるもんなんだよ、今のお前みたいに。…ねえ、あの挨拶を教えたのはパパ?」

『…ッ?……っはじめ、ましての…?』

「そう」

はじめましての男の人を見たら、手を握り目を見てご挨拶…

『…パパが教えて…っ痛い…!』

「あぁ…やっぱりか。ちょっと俺相手にやってみなよ」

『なんで…?』

「は?ていうか、そもそもあの挨拶をしたってことは俺を一瞬でもそういう対象だと思ったんでしょ?…早く」
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