ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
クリスはいつもより少しテンションが高いくらいで、ユウコを見た瞬間から動揺を全く見せない。不自然なくらいに普通だった。
ディノに僕のペットと聞かされていたユウコが実は人間だったなんて…逆の立場だったらきっと僕はびっくりしてドアを閉めてしまうかもしれない。
余計なことを話すなと言われた手前、色々聞かれたらどうしようって考えてたのに…まるでクリスの目にはユウコが本物の犬かなんかに見えているような感じだった。
「あははは、ほんと可愛いなあ〜!」
『…っ痛』
そんなクリスの笑い声が聞こえて顔を上げるとユウコの髪がぐしゃぐしゃになっていた。
「あ…」
「わあ、ごめんごめん!痛かった?昔うちで飼ってた犬もこんな毛色だったんだ、だからちょっと思い出しちゃってつい…でも偉いね、ユウコは痛いことされても噛まないんだ…アッシュが躾けたの?」
「…ううん」
「へぇ、じゃあパパが言ってた通り本当に賢いんだね。あ、そうだ!美味しい紅茶を用意してもらったんだ、冷めないうちに飲もうよ」
クリスはカートからテーブルにティーセットを移した。ふとユウコを見ると、立ったまま動かない。
「ユウコ?」
『………』
「ユウコ、どうしたの?」
肩に触れると、ユウコはハッとしてこっちを見た。僕がその乱れた髪を直すように撫でると、僕の手に擦り寄ってくる。それが可愛くてそのままユウコの頬にするりと触れると、テーブルの方からボソッと声が聞こえてきた。
「…いいな」
「え?」
「あ、いや?…ほら、座りなよ!」
「うん、ユウコいこ?」
僕はユウコの手を握りソファに座った。
「せっかくリードがあるのに手を引くんだ…面白いね」
「これ引いたら…ユウコが苦しいでしょ?」
「へえ?…変なの」
「きみからしたらきっと変に見えるよね」
「…そういえば、アッシュ。ここに住んでたことなんでずっと俺に隠してたの?」
「隠してたわけじゃないよ!…話したつもりでいたんだ、ごめんね?」
「ううんいいよ。昨日パパに聞いてびっくりしただけ。それに、もっといっぱい会えるってことでしょ?俺、嬉しいよ」
クリスはそう言って紅茶をひと口飲んだ。