ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
「ここだよ」
『近いんだね、同じ階だ』
そこは私たちの部屋と4つ隣だった。
ジョセフがベルを鳴らすと、すぐにドアが開いた。そしてジョセフは私の肩にポンと手を乗せると歩いて行ってしまった。
開いたドアの角度が小さくて私の位置からはまだ姿が見えない。
「いらっしゃい、アッシュ!」
「やぁ、クリス」
「さ、入って入って」
「…あのさ、クリス」
「なに?」
「今日…ユウコも一緒に来たんだ、いい?」
「…えっ……それほんと?」
するとドアがゆっくり私の方まで開いた。そこにはアスランと同じくらいの身長でスラッとした綺麗な人が立っていた。その人は目を丸くして私を見下ろした。それを見た私の体は勝手に動いて、クリスの右手を両手で包んでいた。
「……っ…」
『はじめまして、ユウコです』
「…え、ちょ…ユウコ…?」
『え?』
後ろで戸惑ったような声を上げるアスランに私が手を離すと、クリスはその手をパシッと掴み直して少し屈み私の目をじっと見つめた。
「はじめまして、クリスだよ
…会えて嬉しいな」
ニッコリと笑っているはずのクリスのブルーの目は、私を刺すように強かった。
「お、驚いたでしょ?きみはユウコのこと、ずっと犬かなんかだと思…」
「うん、驚いたよ!すごく可愛いんだもん!へぇ、この子がアッシュのペットか」
「………え?」
「ほら、何してるの?入ってよ」
私たちはクリスに促され部屋に入った。その部屋は私たちの部屋とほとんど同じ造りだけど、家具の配置が少し違っていた。
「ねぇ、撫でてみてもいい?」
「撫でる?」
「うん、ほら人のペットを触る時はちゃんと飼い主に許可取らないとさ、それが常識だろう?」
「あ、えっと…ユウコ、嫌じゃない?」
「違うよアッシュ、俺はアッシュに聞いたんだよ…まぁ、この子に聞くってことは良いってことかな」
クリスはそう言って私の頭を撫でて髪をスルッと1束取った。そして私にしか聞こえないような小さな声で呟いた。
「…アッシュは、こんなのが良いわけ?」
私がクリスを見ると、その目は酷く冷たい目をしていた。