ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
いつもロックを解除する音が聞こえて、少し間があいてからアスランが入ってくる。
私は、その少しの間にアスランが何をしているのかわかっていた。入ってきたアスランはいつも真っ赤だったから…。肌が白いアスランは泣くと目の周りや鼻の頭、耳がしばらく真っ赤になってしまう。
それでもアスランが泣いてることを隠しているうちは、知らないふりをしようと決めていた。
今日は少し待っても全然入ってこなくて、心配になった。リードに繋がれていることを忘れてドアに走った私は首が締まって、勢いでベッドに引き戻された。あの向こうにはアスランがいる、そうわかっているのに私にそれを開けてあげることが出来ない。
それが悔しくて、声を張り上げた。
何度も何度もアスランを呼んだ。
ドアを開けたアスランは、いつものようにすぐリードを解いた。でも、涙をボロボロ流しているアスランを置いてどこにも行けない…行きたくない。
15日のアスランからは色んな匂いがする。香水が混ざった匂いや汗の匂い、首筋からはローズのボディソープの匂いもする。でも私は嫌じゃない、これはアスランが15日を耐え切った証だから。
夜おやすみをして少し経つと私の首輪を撫でながら、ごめんね…ごめんね…って声を震わせてるのも気付いてた。
私の方が辛い思いをしてるって何故かアスランが思い込んでるのにも気付いてた。
だから私の前で泣けなくなっちゃったの…?
でも隠さないで…
アスランが守ってくれるように、
私もアスランを守りたい。
私はずっとずっと…そう思い続けてるんだよ。
『っ…アスランは、私が絶対に守ってあげるからね』
アスランは驚いたように目を見開いた。
そしてぼたぼたと涙を流し私を抱き締め、声を上げて泣いた。
「ぅ…ユウコっ、ごめんね…」
『アスラン…ありがとう…』
「ごめん…っユウコ」
『…ありがとう』
「ごめ…っごめんね…」
『ア…スランっ……ありが、とう』
「……ユウコ…ッ、ありが…とう」
そう言ってしばらく抱き締めたあとアスランは、まだ涙が残る真っ赤な顔をして私の膝の裏と背中に腕を置いた。何かと様子を伺っていると、突然グンッと力が入って体が宙に浮いた。
『…っわぁ!』
運ばれた先はトイレだった。アスランはふっと笑って私の背中を押した。