ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
あれから、地獄の15日を数回繰り返し今日もその日が終わった。
部屋に帰る頃にはいつも僕はボロボロだった。
服はシワひとつないし、体にも傷なんてない。
それでも僕は自分をボロボロだと思った。
僕とユウコの部屋のドアが見えてくる。するといつも僕は涙が止まらなくなってしまう。
「……っふ、ぅ…ぐ…う、」
隣を歩くジョセフは、そんな僕に何も声をかけずにいてくれる。どうした?なんて聞かれても何も答えられない。大丈夫か?なんて言われたら僕は何て答えたらいいのかわからない。何も言わないでいてくれるのが、最大の心遣いに感じた。
ピッピッとロックを開けると、肩にトンと触れ足早に去っていった。僕がいつも涙がおさまってから部屋に入っていることに気が付いてたのか。
ロックを解除する音は中にも聞こえる。だから僕が帰ってきたとユウコには伝わっているはず。ベッドにリードを繋がれ、大きく身動きが取れないままに部屋で僕を待つユウコに。
でも、今日は何故かいつまで経っても涙が止まらない。
「…っうぇ……ぅっう…」
止まれ…止まれよ…
早くユウコに会いたい…
顔を見たい…
「う、…ぅ…っユウコ、」
『……アスラン!』
「…っ!」
部屋の中からユウコの声がした。外まで声が漏れるなんて…どれだけ大きな声を?
『アスラン!…ゲホッ…アスランッ!!』
その声に余計に涙が溢れてしまった僕は拭うことも忘れてドアを開けた。僕の目に飛び込んで来たのは、少しでもドアに近付こうとしていたのか首輪が締まってゲホゲホと咳を繰り返すユウコだった。
繋がれている間リードに触れることを禁じられているユウコは、僕が外出している時にトイレに行けない。だからいつもは僕が帰るとすぐにリードを解いてトイレに行く。
今日も僕は急いでリードを解いた。
「…っ、ユウコ…トイレいっ、ていいよ?」
『ぁ…あ、アスラン…っ』
ユウコはそこを離れるどころか僕に抱き着いた。
「…はや、く…いっておいで」
『おかえり…アスラン』
香水の匂いに麻痺した鼻がユウコの匂いだけを確かに嗅ぎとる。
「…っ!?」
胸でユウコが呟いた一言に、僕は抱き締めて離せなくなった。