ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
ディノに背を向けて僕たちを見たマシューは、ユウコの涙をハンカチで拭きながら小さな声で「大丈夫?」と言った。
「…うん」
「何もしてあげられないのが辛いよ…」
「ううん、ありがとう…マシュー」
「少しだけでいい…笑える?」
「うん…大丈夫」
「ユウコは?」
『…っ、うん』
マシューは、悲しげに微笑んで僕たちの肩にポンと手を置いた。
「…さぁ、できた!2人ともとっても素敵だよ」
「準備出来たかね?」
「はい、バッチリです!」
カメラの前に立つとユウコの体はリードから伝わるほどに震えていた。辛うじて笑顔を保っている状態で、また泣いてしまいそうな雰囲気を感じる。
カシャカシャ
吐き気がするような音が連続して響く。
『…っ』
ユウコの嗚咽が漏れるのを感じて、僕は咄嗟に手を握り頬にキスをした。
驚いて僕を見るユウコ。
「がんばれ…ユウコ」
『…ぅ、』
「大丈夫…僕たちは今一緒にいるよ。ちゃんと、ふたりだよ。だから…笑って?」
『…っ!……うん』
パァッと花が咲いたように笑ったユウコがスローモーションに見えて、連られて僕も笑顔になる。
あぁやっぱり僕はユウコのこの笑顔が大好きだ、なんてその首に繋がるリードを握りながら思った。ユウコは僕が守らなくちゃ、何に代えても…そう、例えそれが僕自身の心や体だったとしても。
「…素晴らしい、出来上がりが楽しみだ」