ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
私の手を握る力が一瞬強くなった。それに驚いて下を向くアスランを覗き込むと、グッと唇を噛んで眉を寄せていた。
『ア、アスラン?』
「…アッシュ」
その声にピクッと反応して、私から目を逸らしたままアスランはパパの元へ歩いていった。そして、パパから黒い細長い箱を手渡されている。
「アッシュ、早くしなさい。ユウコが待っているよ」
俯いたまま私の元へきたアスランの顔はさっきよりも苦しそうな、悲しそうな顔をしていてとても不安になる。
『どうしたの…?』
「ユウコ…っ」
『アスラン?』
「…ごめん、」
『えっ?』
「ごめんね…」
そう言ってその細長い箱を私に手渡した。
いかにも高級そうな箱はパカッと開くようになっているらしい。
「開けてごらん、ユウコ」
パパにそう言われ、私はその箱を開けた。
そこには、緑色の綺麗な宝石がいくつもついた細長い黒いベルトのようなものが入っていた。
『……これ、なあに?』
アスランは何も答えない。
「ユウコ、それはアッシュがお前を守るために必要なものなのだよ」
『守る…?』
「そうだ。ほら、アッシュ早く着けてやりなさい」
「……できないよ…」
「なんだと?」
「やっぱり…ユウコに首輪なんて…っ」
「…もう二度と逆らわない、あの言葉は嘘だったのか?また道を違えるのかね?」
「…っ!」
「賢いお前ならわかるだろう。さあ、早くしなさい」
アスランのカタカタと震える手が箱の中のベルトを掴んだ。そして、背後へ回るとそのベルトを私の顔の前を通し、首に宛てがった。少しひんやりとした感覚に神経が集中する。
『な、に…?アスラン…』
「……っ、」
『…どうしたの?』
すると、突然ギュッと後ろから抱き締められる。
「…ユウコ、ごめんね…」
『なん、で?………んっ』
首筋にアスランの唇が触れたかと思うと、再びベルトを私の首に宛てて巻き付けた。後ろでカチャンと金具が合わさる音がする。
私は首の違和感に着けられたそれを手で触る。これって…首輪?
「…っ、」
小さな声が聞こえて振り返ると、アスランは泣いていた。