ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
長い廊下をジョセフに先導されて歩く。隣を歩くマシューは浮かない表情をしていた。
『マシュー、具合悪いの?』
「…ううん大丈夫だよ、ありがとう」
するとジョセフは一際大きな奥の扉の前で止まった。
「マシュー、頼むからそういう顔をしないでくれ……俺だって、何とも思っていないわけではない」
「……えっ?」
コンコンコン
マシューの返事を聞く前に、ジョセフは扉をノックした。中からパパの声で「入りなさい」と聞こえる。
「失礼します。遅くなり申し訳ございませんでした」
「気にしなくていいよ、レディの支度は時間が掛かるものらしいからね」
「…ユウコ、早く入れ」
促されゆっくり中に入ると、パパが「おぉ」と声をあげた。そこは天井が高く、大きな長いテーブルと立派な椅子が並ぶ部屋だった。
「これは素晴らしい…!マシュー、マシューはおるかね?」
「…はい!パパ・ディノ」
「さすがだよ、キミの若い才能には驚かされる」
「いえいえ〜、この子たちの素材が良いんですよ!」
「私の元でスタイリストをするようになってどれくらいになる?」
「あ〜、俺が22の時からなのでもう8年とか…?こんな見た目のせいか若く見られますけど今年で30ですよ!」
「…ユウコ?」
『ア、…アスラン?』
ガタッと椅子を鳴らして、アスランが私に体を向けた。
会いたくて会いたくて仕方なかった彼はいつもと雰囲気が違った。目が合った私は呼吸を忘れるくらいにドキッとする。
アスランは黒のスーツを着こなし、サラサラとした美しい金髪は片側だけを後ろに流していてとても格好良かった。
「さぁ、主役が揃った。パーティをはじめよう、ユウコはアッシュの向かい側の席に座りなさい」
近くにいたスーツの男に椅子を引かれ座ると、サービスカートが数台運ばれてきて私たちの前に料理が置かれた。
「今日はお祝いと歓迎の会だ、食材もシェフも特級を揃えたよ。どんどん食べなさい」
パパにそう言われフォークに手を伸ばすと、アスランに止められる。
「まって、ユウコのと僕のお皿…交換してよ」
『え?』
「なに?……あぁ、そういうことか。あのようなことをする低俗な輩は先程処分しただろう…だが、お前が気になるならばそうしよう。この子たちの皿を交換してくれ」