ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
シャワー室を出ると、さっきの人の他に派手な服を着た見たことのない綺麗な男の人がいた。
「ああ、出たか。遅かったな」
「これは確かに特上…さすがパパ・ディノの御眼鏡に適うだけあるね」
「じゃあこいつも頼む、終わったらコールを」
「はいよ、またあとで」
スーツの男が去っていく姿をぼーっと目で追っていると、パンパンッと手を叩かれた。
『…っ!』
「ジョセフに見惚れた?」
『えっ…』
「…んじゃないのは知ってる」
ふふっと笑うこの人は誰なんだろう…ここにいる他の人とは纏っている空気が全然違う。
「ん?…あぁ、もしかして警戒されちゃってる?安心して、俺はキミに怖いことしないから!」
『……だあれ?』
「俺はパパ・ディノのスタイリストで、マシューだよ。仲良くしようね」
『…スタイ、リスト…?』
「まぁ基本的には洋服選んだり、必要あればヘアメイクしたり?…あ!もちろんパパ・ディノのヘアメイクはしないよ!だって整える毛が…ふ、あははは!……ってごめん、こんなことしてる時間ないんだった。さ、まずはこっちね」
私の背中を押すと、ドレスのような服のかかったラックの前に立たされる。
「せっかくの綺麗な黒髪だし、映えるのにしたいんだよね」
マシューは顎に手をあてながら私を見て、カチャカチャとハンガーを動かす。
「…うーんと、どれも似合いそうだな…」
ふっと私はあるドレスに釘付けになる。
『これ、アスランの…』
「…っ、へぇ」
マシューは驚いたように笑ってライトグリーンのドレスを私に合わせた。
「うん…似合ってるよ、決まりっ!じゃあ次はこっちね」
ドレッサーの椅子を引いて私を座らせると、鏡を見ながら私の髪をブラシで梳いた。
「…あぁ、ほんとだ。すごく綺麗な髪」
『え?』
「さっき同じようにアッシュのところにいたんだけど、彼がキミのこと色々聞かせてくれたんだ。その時にユウコの髪はすごく綺麗だって」
それを聞いた途端、顔が熱くなった。
「あれ?…真っ赤だ」
『っ…私ね、ずっとこの髪がきらいだったんだ。でもアスランが褒めてくれて…その、好きになれたの』
「……っ」
鏡越しにチラッとマシューを見ると、グッと顔を歪めて私を抱きしめた。