ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
「えっ?どういうこと?」
「お前と大切な話をしようと思ってね」
「大切な話?」
「あぁ、ユウコのことについてだよ」
ディノはアッシュ、と僕の名前を呼んで目を見据えた。
「今のユウコはわずかな性的興奮がトリガーとなって、我を忘れて快感を求めるようになってしまった。お前にも覚えがあるはずだ、一昨日の夜のことだよ」
「なにそれ、」
ディノがモニターをつけると誰もいない檻の中が映った。このアングルの映像は何度か見せられたけど、今日はいつもと決定的に違うことがあった。それは見張りの男たちの靴音やシャッターを開ける音が聞こえること。
「…あれ?音が聞こえる」
集音機能は無いと言っていたのに音がするのはなぜだろう。昨日ずっとここにいたけど、誰かがカメラを触った気配はなかった………えっ、まさかもしかして…
「あの、テディベア…?」
「ほう、お前は随分と頭がキレるな…その通りだよ。あのぬいぐるみにはマイクを仕込んである」
「…どうして?」
「会話を聞き取り、そして…タイミングを計る為だ」
これからここで何が起きるんだ?僕は嫌な予感にドクドク騒ぐ胸をギュッと押さえた。
「あぁ、ユウコを乗せた車が表に到着したようだ」
ユウコだって?確かにエンジンの音がモニターからも車の外からもしている。
「ユウコおかえり、俺らが恋しかったか?」
「へっへっへ、アッシュに襲い掛かるような真似しなくてもまた可愛がってやるからよ」
そんな声が聞こえたかと思うと、画面にユウコが映った。
「…っ、ユウコ!」
「あのハイエナ共…」
「えっ…ハイエナって、もしかしてあいつらのこと?いたずらしたって…」
「あぁ」
…あいつら、ユウコにもうひどいことをしないって言ってたのに…ッ
「おい、外は暑かったろ?ミルクの前にこれ飲めよ」
「そうそう、“ミルク”の前にな!」
『今お水大丈夫…』
「あ?パパからの命令なんだぜ、それでも飲まないって言えるのか?」
『…!』
ミルクって前にも聞いた気がする。
ユウコはパパという言葉に反応して水を受け取り口にした。