ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
「ユウコ、よくやったね。あの方はなかなかYesと言わない気難しい男なのだよ。…クリスを持ってしても政治的なことが絡むと途端に表情を固くさせる、よほどお前が気に入ったようだ」
パパは私の頭を撫でて、満足そうに微笑んでいた。
『パパ、私…いい子?』
「…ああ、お前はとてもいい子だ。これからも私の言うことを何でも聞く、可愛いペットでいると約束出来るかい?そうすればアッシュと共に不自由なく生活させてあげよう」
『っ!うん、約束する!』
「そうか、お前は素直だね…。そういえば、今日私とMr.ディックがしていた話を聞いていたかね?」
『どの話のこと?』
「はは…、それなら良い。本当にボーッとしていただけだったのか。ユウコ、今日教えたように最初の挨拶で手を握った瞬間からひとときの間、その人はお前の主人になるのだ。これから主人の前で失礼なことをしてはいけない、わかったね?」
『…あ、ごめんなさい』
「でも、今日は私の想像以上の働きをしてくれた。これはご褒美だよ、ユウコ」
そう言ってパパはシート脇からリモコンを取り出し、ピッと目の前のモニターの電源を入れた。これ、ずっと気になってたんだけどテレビだったんだ。
『……っ、アスラン?』
そこに映ったのは、檻の中でベッドに腰掛けるアスランの姿だった。
『あ…!やっぱりアスランだ…!』
私は身を乗り出し、モニターに近付いてその映像を観た。ケープコッドを出てからずっと一緒にいて、別々の場所で夜を明かしたのは初めてのことだった。会いたい、声が聞きたい…じわっと視界が歪み、その想いが溢れ出す。
「…おやおや」
『…っ、…ぅ…あいたい、よぉ』
屋敷に着くまで泣き続ける私にパパは黙ったまま何も言わなかった。