第21章 年越し
ピピッ
と、自分以外誰も居ない部屋で鳴り響く体温計の無機質な音。
その音で沈みかけていた意識が浮上してきた。
ごそごそと体温計を取り出して表示された数字を確認する。
「…………8度6分…」
そこにははっきりと38.6と表示されている。
確かに年末で色々と仕事を詰め込みすぎた。特に写真集は本人は楽しくしていただろうが体には相当な負担になっていたのだろう。
因みにもうマネージャーには連絡はした。解熱剤を飲んで熱が下がるのでインフルエンザではないのだろう。
もちろん、こんな状態では実家にも帰れない。
連絡すれば「気にしなくて良い」と来たので大晦日と元旦は一人で引きこもりになる。
「一人は寂しいな…」
無意識に出た言葉。
最近は一人でいることが少なかった。
何かあれば先輩達が構ってくれてそれが楽しくて寂しいという言葉からかけ離れた日々を過ごしていた。
そして改めて一人になると周りの人たちの存在感がどれだけ大きいか感じてしまう。
風邪を引くと何故か人肌が恋しくなる。
しかし、今日は大晦日。先輩たちは実家に帰ってゆっくりしているはずだ。家族団欒しているときに水を指すわけにはいかない。
「……………ねよ」
あまり考えてると本気で泣いてしまいそうだ。
そう思い布団を頭まですっぽり被り無理矢理目を閉じた。