第15章 脱・居候
自分の腕の中で呑気にすやすやと寝ている尊を見て何とも言えない気持ちになる江口。
数十分前、酔ったふりをして尊に甘えてみた江口。
そう、あの会話、実は江口は泥酔まではないがあまり酔っていなかったのだ。ちゃんと理性がある上で「一緒に寝ろ」というお願いをしたのだ。
最初の方は渋っていた尊も今ではぐっすりと眠っている。
(呑気なやつ…)
尊の寝顔を見ながらそんなことを思う。
「たまに浅にぃ酔いすぎて私を抱き枕にして寝ることがあるんですよ…最初の方は照れてたんですけど…何か耐性がつきましたね!」
そういえば尊がそんなことを言ってたのを今さら思い出してしまった。
(あー…だからこんな普通に寝れてんだ…)
それが少しムカついて眠る尊の頬をつつく。「んー…」と少し唸ったがまったく起きる気配はない。
(まぁ…今だけは…)
今だけは独り占めできる。
そんな少しの優越感に浸りながら江口も眠りについた。
こうして江口と尊の居候物語は静かに幕を閉じた。