第10章 はじめまして
エルヴィンside
時間がかかったが、どうにか議会の承認を得て調査兵団専属の医療部隊を作ることができた。
だが、いくつか気がかりなことがある。
一つ目は、キーンさんのことだ。このことを報告しようとウォールローゼにある彼の診療所に行った時のことだった。
エルヴィン「診療所が...こんなにボロボロに...何があったんだ...」
近所の住民「キーン先生なら、1年前にウォールマリアの移民が暮らす地域で発生した伝染病の治療に行かれてから、戻ってこないんだよ。」
エルヴィン「それはどういうことだ...?詳しく教えてもらえないだろうか?」
近所の住民「いや...先生について話すことはここら辺ではタブーになっているんだよ...。先生が姿を消してからすぐ、駐屯兵がこの家を壊しにきたんだ。どうにも、キーン先生は伝染病のことで上のお偉いさん方に食ってかかったらしい...。あたしらも先生にはとてもよくしてもらっていたからねぇ...残念でならないが、きっと先生はもう...」
そういうと、話してくれた住民は泣き出した。キーンさんがこの町の人に好かれていた証拠だろう...。
エルヴィン「ミカエルにはまだ、言えないな...。」
確かな情報がない分、先生がまだ生きていることだって考えられる。今、そのことをミカエルに話したら医療部隊どころではなくなってしまうだろう...。
酷だが、新しく結成されたばかりの医療部隊にはキーンさんのもとで医療を学んだミカエルの力が必要なのだ。
エルヴィン「キーンさん。あなたのことは、私が必ず見つけ出します。そして、ミカエルのこともきっと守ってみせます。」
彼が消えた街を後にしながら、俺は固く誓った。