第8章 そして、選択する
ミカエルside
キーン「そうして、私は人づてに、地下街で人を救うために医学を学んでいるという女の子の話を聞いた。それがお前だ。」
知らなかった。先生の過去も、私がなぜ連れてこられてきたのかも。それでも、先生と過ごしたこの3年という時間が、教えて貰えなかった怒りや悲しみよりも上回った。
「先生は...私を、医務官にしたいんですか?」
キーン「どうだろうか...。分からなくなってしまったよ...。初めは確かにそのつもりだった。だが、お前と過ごしている内に、お前は私にとって実の娘のように大切な存在になってしまった。お前をここに...私の勝手な考えによって...ここに連れてきた私が言えたことではないが、お前が選ぶんだリン...!」
医務官になればもっと、多くのことを学べるだろう...。そして、もっと多くの人を救えるかもしれない...。
それに、先生がかつて目指した調査兵団専属の医療部隊を作ることに私が力になれるかもしれない。ウォールローゼへ逃げてきた移民たちを自由にすることも...。
なによりも、先生が私をとても大切に育ててくれたことが分かったから...。
「エレンたちの元から離れるときも、プレミンジャーのあの家を出た時も、キーン先生のもとへ来た時も、選んだのは全部私です。私、自由を目指すためにも...後悔しないためにも...医務官になります...‼︎私に選ばせてくれて..ありがとう...父さん..!!」
初めて、呼んだ父さんという言葉が照れくさかったが、父さんは涙を浮かべて優しく微笑んでくれた。