第4章 エルヴィン・スミス
それから、私はミカエル・プレミンジャーになった。
プレミンジャー邸では、甲斐甲斐しくメイド達が世話をやき、お嬢様と私を呼んだ。
私は、何度も脱走を企てたが、繰り返すたびに大人と子どもの力の差を思い知った。
父親と名乗る男は、私のそんな様子を見てウォールシーナ内にある貴族専用の図書館へのみ外出を許した。もちろん、ならず者のような顔をした雇った見張り役をつけてだが。
図書館はこの壁の中でもっとも規模の大きいものらしかった。
協会のようにきれいなステンドグラスがはめられ、3階までぎっしりと本棚で埋め尽くされていた。
ミカエルは、3階の窓辺で医学書を読んでいるときが一番好きだった。貴族たちは本になんか興味がないのか、図書館はがらんとしているし、見張り役の男は1階の入り口で暇そうに見張っている。
「グリシャさんが教えてくれたことが載ってる」
しかし、まだまだ幼い少女にとって脱走もできないウォールシーナの壁の中は、孤独であった。