第14章 初恋
ー初恋ー 番外編②
ミカエルには不思議と人の本質を見抜く力があるように思えた。彼女はまだ12歳と幼かったが、真っ直ぐな目をして聞いてくれた。俺は、彼女と過ごしたあの夕焼けに染まる図書館での時間が人生の中での絶頂の幸せだった。
そして、ミカエルはとても綺麗になって俺の前に現れた。ミカエルの過去の話の中に出てきた、地下街で助けてくれた人...それがリヴァイなのだろう。時期を考えても、俺がリヴァイを調査兵団に入れたのはミカエルがいなくなって3ヶ月のことでつじつまが合う。
それに、ミカエルがリヴァイに向ける視線はいつも悲しかった。手の届かないものをみるような儚い目でリヴァイを見るミカエルを見て、俺は自分の想いを封印することに決めた。
ミカエルに正体を隠して、本格的にリン・キーンとして生きろと言ったのは俺だ。リヴァイに恋をしているミカエルは、過去に出会ったのは自分だと言えないまま苦しんでいる。
だからこそ俺は、自分勝手にミカエルに想いを告げることなどできなかった。
あの時...彼女が質問したとき、本心を伝えていたら...彼女はどんな反応をしていただろうか。そんな想いを振り払うように、俺は今日も夜の世界を眺める。
木の下で月を眺める二人が、偽りの名を介しているとしても、結ばれるように...ミカエルの儚い初恋が叶うように...俺はただここで見守っている。
ー初恋ー 番外編 完