第2章 幕開け
父である紫月 要が死んだ…。
それは突然の事で、雪音に心の準備をする間も与えてはくれなかった。
過労が原因だったらしい。
母親が亡くなってからというもの、要は働いてばかりいた。
それもこれも、雪音と煌に不自由な思いをさせたくないという…要の優しい思いがそうさせていたのだろう。
雪音は女でまだ子供。家業を継ぐのは無理だと、親戚が集まった席での話し合いで兄の煌を跡継ぎと決まったらしい。
雪音に異論などある訳が無かった、優しくて頭も良い兄ならば適役だ。雪音自身がそう思っていた。
雪音「お兄様、お疲れ様です」
煌「ただいま、雪音は本当に良い子だね」
仕事から帰った煌の上着を預かる。
もう夜中の1時だったが、雪音は寝ずに兄の帰りを待っていた。こうでもしないと、社長職に就いた多忙な兄とは話す機会すら無いからだ。
朝早く家を出て、夜遅くに帰って来る。
父の会社の社員で居た頃は残業をしても、夜の8時には家に帰って来てくれていた。
雪音「身体、壊さないで下さいね?」
煌「ありがとう。僕の妹は最高に可愛くて、世界一のレディだよ!」
心配からか、兄から受け取った上着を抱き締めながら僅か見上げる様に兄を見る。上着を抱き締めた事により胸が寄せられ、谷間を作る。
その仕草は年よりも幼く、また女性の醸し出す色気の様な物を感じさせた。
煌「(雪音は、僕が知らない内に成長していたんだな…)」
煌には一つ、叶えたい欲望があった。
今はもう聞かなくなった奴隷、という言葉。奴隷の中でも性処理の為の肉奴隷。
それを実際に作る事が出来たなら、どれ程楽しいだろうか。そんな禍々しくも歪んだ欲望に囚われていたのだ。
肉奴隷を販売するという、肉奴隷計画。進めたくとも、誰も出資などする訳が無い。
しかしふと目にした妹の色気のある姿は、自らが考えていた理想にぴったりとはまった気がした。