第3章 散り、咲き乱れし華【R18】
その頃、煌の秘書である野崎は、調教師として煌が集めた人間を車に乗せて向かっている途中だった。
暎「うわ、君ってcolorfulの真白君だよね?マジか、俺アイドルに会うのって初めてかも」
翼「………」
暎「えっと…?」
ホストという仕事柄、目の前の人とコミュニケーションを取る事が当然という考えである為か、明るく話し掛けてみるも顔を背けてしまう翼。
焦り半分、苛立ちと疎外感が半々といった感じで首を傾げる暎。
翼「…何?」
急に話し掛けてきたと思えば黙り込む、そんな暎の姿に苛立ちを露に睨み付ける翼。
暎「折角同じ調教師となったんだし、仲良くなれれば、と思ったんだけど」
翼「迷惑」
漸く口を開いた翼に、暎は再び笑顔を向ける。
すると、翼は足を組んでくだらないとばかりに吐き捨てる様に答えた。
そんな様子を見て黛 黒兎が、ただあたふたとしていた。
黛「あ…ああ、あの……!」
暎「お、どしたの?」
翼「黒兎さん、ウザいんだけど」
運転席まで届く黒兎の、やはり吃っている声。僅かに大きく張られたその声に、野崎は思わずブレーキを踏みそうになってしまった。
黒兎の場の張り詰めた空気を壊す様な声に、暎は人当たりの良い営業スマイルを貼り付けて問い掛ける。
しかし、再びの翼のツンとした物言いで、圧が掛かった様にまたもや場が凍り付いた。
黒兎は俯いて、何かをブツブツと呟いていた。
黛「翼君がウザいって…ふふ、煌さんに言われたら何れ程……ああ、新しい煌さんのペットが羨ましい。でも、そのペットを煌さんは俺にも可愛がらせてくれる……あああ、楽しみで仕方無い!」
先程の吃音症めいた吃っていた口調は何処へやら。
最初は小声であったが、段々とボリュームを上げて、最後は叫ぶ様にして自らの思考をぶちまける。
驚いたのは野崎と暎の二人だけであった。
泉「…すー……すー……」
車に乗り込んでからというもの、泉 飛鳥はただひたすらに眠り続けていた。
まるで、何日も眠らずに居た人の様に。
リムジンという高級車の広い車内、五人は以後、一切口を開く事は無かった。