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星条旗のショアライン

第13章 ソー&スティーブ(MCU/EG if)



(6)

「……」
「……」
「もう……良いだろう、二人とも。そこまでだ」
悪戯をした猫が捕獲されたかのように、俺とソー共々ハルクに後ろ首を掴まれている。爪先すら宙に浮いた状態でしばらく好奇の目に晒されていると、徐々に己の失態と羞恥が募って血の気がサーッと下がっていく。
かつてナターシャの子守唄がハルクの変身を解いたようにソーのキスが俺の暴走を止めたと解釈して間違いないだろうが、それにしたって……キスが長過ぎた。それに尽きる。寧ろもっと早く割って入って欲しかった。俺はソーに施される事を基本的には拒めないのだから。
顔を覆い隠す。耐えられない。みんな見ないでくれ! そう思うのに誰かが靴音を盛大に鳴らしながら近付いてくる気配がする。殴られるのだろうか。痛くはないが良い歳をして恥ずかしいからこれ以上は放っておいて欲しい。
「レイン」
抜けた腰がまた震えた。名を呼ぶバリトンボイスが脳髄まで痺れさせる。少しそんな予感はしていた、こんな時に真っ先に怒り狂うのはロジャースだと。指の隙間から恐る恐る窺うと思っていたよりも間近に彼の顔があってつい悲鳴が漏れた。
「あっ、ああ、ハルクッ、ハルク頼む、俺を肩車してくれっ、コイツの届かないところに行きたいっ」
「それをすると僕の立場が危うくなるから遠慮するよ」
「あーっ! ハルクのばかーっ!」
その後、こめかみを泡立たせながら太陽も眩むばかりの笑顔を振り撒くロジャースがハルクの手から俺の身体を奪い取って、彼にあてがわれた部屋へと連れて行かれるまで、あと数秒の出来事である。



終わり?
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