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星条旗のショアライン

第1章 スティーブ・ロジャース(MCU/EG)



(5)

「待ってくれ、スティーブ! トニー!」
思わず仲間言葉が飛び出した自分に気付かず、スーツを身に纏って更に過去へと戻ろうとする二人を引き留めるものの、呆気なく彼らのタイムスリップを許してしまう。
「……っ、くそ」
一方、背後でロキの杖を抱えるスコットは立ち尽くし、両手を広げて軽く振ってみせるジェスチャーで不満を顕にした。温厚で陽気で人の心の機微を理解して優しい言葉をかけられる仲間思いな彼が呆れるくらいなのだ、二人の性急さと説明の無さは確かに少し腹立たしい。
「なんなんだよ、あの二人。俺の話を聞いてたのか? ピム粒子は全員分の往復しかないって何度も説明したつもりだったけど、そんなに俺の言っていることは難しい事だったか?」
「いや……いや、スコット。君の話はしっかり皆に伝わっていたよ。ただ……あの二人は特殊なんだ」
「慰めてくれてありがとう、よく分かったよ!」
完全に拗ねてしまったスコットを根気強く宥めつつ、俺も胸の奥をしくりと痛ませていた。好意を晒し出したさっきの今で、ずっとパートナーだった俺を見向きもせずに置いていって、あまつさえトニーを見詰めながら『君を信じる』だなんて。
(スティーブの切り替えの速さには着いていけない……)
お門違いな嫉妬で胸をムカつかせている自分の醜さを飲み込みながら、未だへそを曲げたままのスコットと現代に帰る為の準備を進めた。

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