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星条旗のショアライン

第16章 【長編】2019年 Xmas企画③(MCU/蛛and医)



肩の手が申し訳なさそうに二の腕を滑っていくのを感じて慌てて引き掴めば、少年はぎくりと身を揺らす。まるで捕って喰われる事を恐れる小動物のように上目遣いで俺を見た。表情をころころと変える若々しさが眩しい。
「あ、あの……」
「君の言いたいことは充分理解できたよ。すまなかった。事情も知らずに。気を悪くさせたね」
「っ……」
「……いや、きっと謝るべきでもないんだろう。俺は人付き合いが若い時から苦手なんだ。でもそれを理由に君を傷付けっぱなしでは駄目なのも分かってる」
間に髪入れず「だから」と続けて引き掴んだ手をきゅっと握れば反射的に握り返された。大人しく俺の言葉を待つ姿はまたもや忠犬のそれだ。ほんのり温かい紙袋を抱え直して一歩分の距離を詰め、息が重なるほど顔を寄せて耳打ちの仕草をすれば、少年は目を白黒させながらも僅かに痩躯を折り曲げてくれた。
「……だから、何かお詫びをさせてくれないか?」

(7)

「なら僕の家のクリスマスディナーに招待させて!!」
「えっ」
てっきり懇切丁寧な謝罪の要求か紅茶一杯分程度の軽い金銭要求だと思っていたのに、耳を刺す喜色に満ちた台詞は間違いなく相伴の提案だった。早とちりを恥じる暇もなく寝耳に水が溜まる一方だ。
とはいえ少年の喜びように気圧されて、お詫びの範疇が想像を超えていようとも強く拒否できなかった。何より罪悪感が勝った事実も手伝っているし、純粋に招いているだけだということも瞳の煌めきから判断がつくのだから質が悪い。
「こんな事ってもう二度とないかも! 我が家にレイン・フリーマンさんがやってきて、しかも一緒にクリスマスを過ごせるなんて……これってネッドに自慢できるよね!」
「ネッドって誰かな」
「それじゃあ二十五日の午後六時に地下鉄駅に迎えに行きますから!」
行くとは言っていない内からこれだ。今からでも詫び方くらい口を挟んでも許されるだろうかと眉尻を下げながら、気忙しげにはしゃぐ少年を見守る他なかった。

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