• テキストサイズ

徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第11章 板挟み


「わたしがいないと困るって……如何して?」
「泉さんが居ないと太宰さん永遠に仕事サボりますからね」
「え、何でわたしの所為?」

 今度はわたしがきょとんとする番だった。だっておかしいじゃない、逃げ出した恩知らずが居ないくらいで仕事に支障が出るなんて。

「だって泉さんが居なくなった後、太宰さん物凄く焦ってたんですよ。珍しく」

 わたしが居なくなった後、直ぐに乱歩さんの推理で「泉ちゃんもうこの街には居ないよ」と言われたそう。社の仲間でも無いわたしをそこ迄して追いかける理由は探偵社には無く。

「で、その後太宰さんはいつも以上に仕事をサボりまくり。敦くんと鏡花ちゃんは仕事はするけど凄く落ち込んじゃって」

 結局国木田さんの頭痛の種は増えるばかりだし、太宰さんは暇さえあれば例の自殺の本を見るか泉さんの写真眺めてるし。潤一郎くんは困ったように苦笑いを零した。

「其れで連れ戻しに来たって訳ですよ」
「でも、如何してマフィアに居るって……」
「太宰さんと会ったのは夜ですよね?」
「え? ええ……」
「其の時、泉さんが物凄く病んでたって鏡花ちゃんと太宰さんが言ってたんです。それで、若しマフィアの誰かと会えば其のまま引き摺られて行くんじゃ無いか、と推理されたみたいで」

 大方中也あたりだろうね。と太宰さんは其処まで目星をつけていたらしい。強過ぎる。

「残りの僕の仕事は泉さんを連れ帰る事だけなんですけど……」

 ビクリと肩が震えた。チャンスだよ、折角戻って来いと云ってくれてるんだから。今なら行ける。けれど、わたしの脳裏に浮かんだのは二人の言葉だった。

『私の呼び出し以外では探偵社に来るな』
『今の手前は光よりも闇の方が似合ってる』

 如何しても其の言葉達が枷になり、わたしは動けずに居た。

「……どうやら無理矢理連れてこられた訳じゃなさそうですね」

 帰りたいとも出たいとも思ってなさそうですし。潤一郎くんは軽く息を吐いた。呆れただろうか。

「それじゃ、騒ぎが大きくなる前に僕は逃げますね」
「ま、待って!」

/ 161ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp