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徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第11章 板挟み


「待って!」

 わたしは思わず潤一郎くんを呼び止めた。怪訝そうな顔をして彼が振り向く。

「紅葉さんを探偵社が連れ去ったって言うのは本当?」
「嗚呼、其れは事実ですよ」

 潤一郎くんはあっさりと認めた。だが実際には連れ去ったとか誘拐の類ではなく、ただ保護しているだけだと言う。
 何でも、鏡花ちゃんを取り返そうとした紅葉さんと其れを阻止しようとした探偵社、突然割り込んだ組合──ギルドとの三つ巴の戦争になったらしく。全員大怪我をして大惨事になったそうだ。
その時、成り行きで紅葉さんを保護したのだとか。

「……社の皆は無事?」
「はい、無事ですよ。……与謝野さんの異能のお陰で……」
「あはは……うん……どんまい」

 こればかりは苦笑いを浮かべる他ない。顔色を真っ青にした潤一郎くんは少し焦りを見せた。

「そろそろ此方も勘付かれそうなので戻りますね」
「ええ、そうした方が良いわ。……潤一郎くん、わたし……」
「大丈夫です、国木田さん達には上手く言っておきます。……泉さん、またね」

 にこりと笑いかけられ、わたしも釣られて笑みを浮かべた。タッタッタッと軽やかに走り去る足音を聴きながら、わたしはぽつりと呟いた。

「会えたら……ね」

 でもそんな事があったなんて、全く知らなかった。でも、紅葉さんを探偵社が保護しているのなら、探偵社とマフィアで全面戦争になってしまうのでは?
 そこまで考えた途端、バァン!と部屋の扉が蹴飛ばされた。

「うひゃ!?」
「おい! さっきの部下はどうした!」
「さ、さっきの……ってもう居ないですけど」
「何処逃げた!」
「さ、さぁ……? 何かあったんですか?」
「あの部下はスパイだったんだよ!」

 どうやら潤一郎くんの変装だとは気付いていないらしい。そして、探偵社vsマフィアvs組合で全面戦争を起こそうという策略が起きようとしているという事を中也さんが伝えた。

「全面戦争……」
「組合のボスは横浜を欲しがってるらしいからな」
「横浜狙われすぎじゃありません……?」

 わたしの時といい、何故こうも横浜は狙われるのか。中也さんが帽子を脱ぎながらソファにどかりと腰を下ろした。

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