第1章 パイセン
「嘘だろ・・・」
「嘘じゃないよ。企画で沖縄行くから。あと無人島もまたやりたいしその準備して、トークライブも予定してるからその打ち合わせして、コラボで東海のとこ行って・・・」
「聞いてた話と違う!」
「さっきミーティングで決めた。もちろんナマエさんついてきてくれるよね?」
「ナマエさんがいないと俺ら困るもん」
トミーもカンタもずる賢い。ナマエは本当に二人のことを大学生の頃から可愛がっている。そんな二人に頼りにされて、力にならないわけにはいかない。ナマエはとてもちょろい男なのである。
そんな三人だが、ナマエが先に大学を卒業してからはしばらく疎遠だった。再会は偶然だった。就職した会社の倒産が決まり、当時付き合っていた彼女にも振られ、コンビニの前でコーヒー片手にぼうっと呆けていた所をカンタに発見され拾われたのだ。
正直、後輩の家に転がり込まなくたってしばらく暮らしていける貯金はあったし、すぐにでも仕事を探すことだってできた。でもそれをしなかったのは。
―――会えてめっちゃ嬉しいです、ナマエさん!
―――いつまででもいてくれていいですからね!
全てを失くした自分にこんなにも懐いて、再会を喜んでくれる後輩が、ただただ可愛くて仕方なかったのだ。
「・・・バイト先に相談しとくよ。できるだけ参加できるようにする」
二人の執着は日毎に激しくなっていく。同居人から見るととても異常だ。しかし、それをどこか心地好さそうに受け止めるナマエも、同居人からは異常に見えるのだった。