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パイセン【男主】

第2章 Kからパイセンへ


ナマエとの再会は奇跡だった。カンタはつくづくそう思っている。
あの日たまたまあのコンビニ行った自分を何度褒めたことか。それについては相方のトミーも、コンビを組んでから一番と言っていいほど褒めてくれた。
カンタとナマエの出会いは、カンタが大学一年生、ナマエが大学三年生の時だった。例のお笑いサークルで見かけたナマエは、カンタの想像する理想的な大学生そのものだった。たくさんの友人に囲まれ昼食をとり、程よく勉強と遊びを楽しみ、サークルでは中心的な存在で、週末は飲み会、可愛い同い年の彼女がいて、とにかくきらきらとしたかっこいい先輩だった。カンタはとても憧れた。ナマエのすべてに。
自分ではどうやっても近づけない存在だと思っていたが、トミーの人付き合いの上手さに便乗しなんとか繫がり、半年経つ頃にはカンタとトミーの二人はセットでナマエに可愛がられるようになった。
ナマエが卒業してからも変わらず遊べるものだと思っていた。しかしナマエの卒業から数カ月後、カンタもトミーもナマエとは音信不通になっていた。
再会してから聞いた話だが、その当時、ナマエはスマートフォンを水没させてしまったようで、電子機器が苦手なためバックアップをとっているはずもなく、家族以外の連絡先は全て分からなくなってしまったらしい。SNSもLINEしか登録していなかったし、その唯一のLINEでさえパスワードを忘れてログインするのが面倒くさくなり、新しいアカウントを作ってしまったそうだ。それもスマートフォン自体契約し直したため、新しい電話番号になっていたのだ。
当時はそんなこととは露知らず、突然連絡の取れなくなったナマエを心配し、そして恨んだ。もんもんとナマエのことを毎日のように考えて、カンタは行き着いた。自分はナマエのことを好きなのではないか、と。
気づいてしまったその気持ちに慌てて蓋をした。きっと気のせいだと。
しかし約三年ぶりに再会して、その蓋はどこかに消えてしまった。

この人が好き。この人と再会できてよかった。

それだけが、しばらくの間カンタの中にあった感情だった。


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