第4章 おやすみのお時間です
「お嬢様が寂しい時、嬉しい時、おそばにずっといたのは誰でしたか?」
「え」
「初めてピーマンを食べた時、逆上がりが出来た時」
「ハイセ?」
「初めて、好きな殿方が出来たとかわいらしくお顔を染めて報告したのは、誰でしたか?」
誰、って。
「…………ハイセしか、いなかったもの、誰も」
「ええ」
嬉しそうに目を細めるハイセに、また不覚にも目がクラクラきそうになった。
だけど。
ハイセはいつも、あたしの目をすっきりさっぱり覚醒させるのが上手い。
「他の使用人には全て、お嬢様との関わりを必要最小限制限しておりましたので」
「………は?」
今、一気に現実に戻れたわよ。
危うくハイセの色気に連れていかれるところだったわ。
「何て言ったの?」
「はい、お嬢様が僕以外と関わりになるのをシャットアウトしたのは僕です、と申し上げたのです」
それ、そんなに豪華な笑顔振りまいて述べる内容かしら。
「………」
「お嬢様は僕以外に、執事としても男性としても、満足なんて出来ないはずです。お嬢様にはこの10年、僕しかいなかったのですから」