第4章 おやすみのお時間です
反らした視線を正面へと向けたあたしの視界には、熱っぽく揺れる、ハイセの表情。
「………え、と?」
ドキン、ドキン、と。
うるさく跳ねる鼓動はハイセのなのか、自分のなのか、それすらもわからない。
「昼間、お嬢様目を閉じましたよね?」
「は、え、え?」
耳元へとねじ込まれたのはそんなハイセの低い囁き声で。
言葉の内容が頭に入って来ない。
「目?……メイクの、時?」
アイラインを引いてもらった時に、確かに1度目は閉じた。
「いいえ、クレープを落とした、路地裏です」
「え、ええ?」
待って。
ハイセの顔が近すぎて。
思い出したいのに羞恥心が邪魔をする。
クレープ。
クレープ落とした?
「キスされると、思いました?」
「え?」
耳たぶを甘噛みしながらそう、問いかけるハイセの色気が半端なくて。
なんかもう、いろいろいっぱいいっぱい。
「だから目、閉じたんですよね?」
「え」
「僕とキス、したいって思ったんですよね、あの時」
「………な、……っ」
か、ぁぁぁぁって。
全身が温度をあげる。